院長コラム

② 乳腺症と言われたが…

乳腺の外来には日々様々な症状を感じて受診される方いらっしゃいます。乳房に痛みやしこりを感じて心配になり、病院に行ってみたが、診察の結果「何も異常はありませんよ。あなたは乳腺症です」と言われた経験を持つ方は、たくさんいらっしゃると思います。でも、乳腺症ってなに?と疑問に思われた方も多いのではないでしょうか。

たった3文字の「乳腺症」ですが、これは様々なものが含まれる広い概念です。乳腺の中にある正常な細胞に、女性の体内のホルモンの変動が様々な形や程度で影響を与えるのが原因とされます。

これによって、正常の細胞が乳房内で部位によりアンバランスに増えたり、細胞自体がやや強い変化をしたりします。現れる症状として不快な痛みや様々な硬さのしこりを生じ、時には乳頭から異常分泌を呈することもあります。個人差はありますが、多くの成熟女性で認められる乳房の変化で、一般に病気の範疇には入れていません。

例えば、ご存知の方が多い「のう胞」も乳腺症を構成する一つの要素です。乳房の乳管内にある分泌物が一か所で停滞して正常の乳管が膨らんでいる状態で、通常は治療は不要です。一方乳腺症の中には、いわゆる「正常からの逸脱」と位置づけられる強い変化もあり、画像検査や細胞診で時には乳癌との鑑別を要するような紛らわしいものがあります。また将来的に周囲で乳癌が発生する可能性が通常の乳腺に比べやや高めとされる変化もあります。

乳腺症変化が強い女性は、そうでない方に比べ触診も画像検査もより複雑で、病変の姿が背景の乳腺症変化に埋もれて見えづらくなります。最も早期の乳癌である非浸潤癌(0期)の場合、触診や画像が乳腺症と似ていることも多いのです。

だからこそ、日頃からの自己検診はもちろん、定期的に乳腺専門外来を受診し、画像による検査を受けて、乳房のわずかな変化を見逃さないことが大切なのです。

①  乳房のしこりに気づいたら、その後は?

北海道の女性(40~60歳代)の乳がん検診受診率は全都道府県中40位代と低い現状です。自己検診や日常何気ない機会にご自分の乳房のしこりに気づくと、女性の皆さんはびっくりし、不安を抱えるでしょう。周囲に相談する方もいれば、ひとりで悩んで時が過ぎてしう方もいます。しこりがあるとまず「乳がんかも?」と考える方が多いのではないでしょうか。

怖くなって逆に病院に行くのをためらってしまう方もいます。でも、必ずしも乳房のしこりイコール乳癌ではないので、まずは調べてみることが解決への第一歩なのです。

とは言え、病院でどんな検査をされるか不安に感じる方もいるでしょう。乳腺外来ではまず皆さんの自覚症状をお聞きし、しこりがあるようなら、まずその場所や大きさを確かめます。乳がんの中には石のように硬い感触のものから、あたかも脂肪の塊のように柔らかく触れるものもあります。

しこりを確認したら、それは病変を疑って詳しく調べるべきものかを画像検査で検討します。マンモグラフィと超音波です。マンモグラフィは乳房を挟んで撮影するレントゲン検査、超音波は乳房にゼリーを塗って内部を動画で詳しく調べる検査です。どちらも大切な検査でお互いに双方の弱点を補います。画像で異常を見つけたら、次に細胞診という精密検査へ進みます。細胞は病変を構成する最小の単位です。採血用の細い針でチクッとしますが、十五秒程で終わる簡便な検査です。画像で見えたものが経過観察で良い病変か、さらに詳しい検査や治療を要するのかを判断する有効な道しるべとなるのです。ここまでは1回の受診で済みます。

後は数日結果待ちです。乳房に関しての受診に高いハードルを感じる方も多いですが、しこりの正体がわからず、ひとりで悩まないでください。必要な対処が分かれば安心できますから、ぜひ一歩踏み出して調べてみると安心ではないでしょうか。